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『腰辨頑張れ』成瀬巳喜男、現存最古の監督作

監督/原作:成瀬巳喜男 1931年 成瀬巳喜男8本目の監督作。現存最古の成瀬作品でもある。今日の目で見ると月並みなストーリーだが、単なるドタバタコメディに留まらず、生きた人間の悲哀を盛り込んだことが当時は高く評価されている。'30年代初頭、日本映画がまだ発展途上にあり、成瀬自身もキャリアをスタートして1年ほどの頃だ。 そして統一された全体としての作品の出来は平凡かもしれないが、細部には魅力も沢山ある。日常の...

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『一番美しく』決して出来はよくないが正直で初々しい作品

脚本/監督:黒澤明 出演:矢口陽子・入江たか子 1944年 矢口陽子演じる渡辺ツルが踏切で自分のミスに気づく瞬間や、調整途中のレンズを横に置いたまま新しいレンズの調整に入ってしまう様子がフラッシュ・バックで挿入される。陳腐ではあっても分かり易い表現で、ストーリーが誰にも誤解の余地のない明瞭さで観客に伝えられる。どうやら黒澤としては前作『姿三四郎』に引き続き、老若男女を対象とした娯楽映画のつもりだったらしい...

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『まごころ』人と視点の移動

監督/脚本:成瀬巳喜男 出演:入江たか子・加藤照子・悦ちゃん 1939年 人の移動を描いた映画だ。常に動き続ける人と視点とがこの映画の大きな魅力になっている。 冒頭から「大日本愛國婦人會」の人々がゾロゾロと列をなして移動していく。カメラがその中の婦人二人を追う。と、橋の上で彼女たちが女の子二人組と行き交う。すると今度は女の子たちを追って視点は逆向きに移動していく。もう、人やカメラの動きに快感が伴っている...

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『麗猫伝説』映画の嘘

監督:大林宣彦 出演:入江たか子・風吹ジュン 1983年に火曜サスペンス劇場の一編として作られたテレビ映画で、1998年に劇場公開されている。完成度は極めて低いが、虚構性の露わなディティールや短い1ショットの美しさを備えた大林宣彦らしい一作だ。 戦前の大女優で戦後は化け猫女優として知られた入江たか子が出演していて、作品の内容も彼女へのオマージュとなっている。この映画の描く世界では、映画自体は現実の世界同様、...

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『可愛い悪魔』美しい仮構の世界

監督:大林宣彦 出演:ティナ・ジャクソン(川村ティナ)・秋吉久美子 1982年 手作り感ある仮構の作品世界と数々の特殊で美しいイメージに際立った魅力がある。 日本テレビの「火曜サスペンス劇場」の一作として作られた作品で、映像や音声の品質はテレビドラマそのものだし、大袈裟で不自然な演技、過剰に使用されて煩わしい背景音楽など、弱点も沢山ある。映画としては鑑賞に耐えられないレベルに見えるかもしれない。 しかし、...

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『ファンタスティック・プラネット』独創的なSFアニメ

監督:ルネ・ラルー 原作:ステファン・ウル 美術:ローラン・トポール 仏・チェコスロバキア 1973年 不思議な世界観が気持ち悪くも魅力的な映画。不気味でシュールな設定、それに形を与えた美術、奇妙でありながら現実的な物語、とにかく何もかもが独創的だ。 映画を見始めるとまず、ペン画のようなタッチを残した手描きの絵がそのまま動くのに驚かされる。どの作品を見ても質感が一様な日本やアメリカのアニメに慣れた目には...

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『ヒューゴの不思議な発明』様々な示唆

監督 マーティン・スコセッシ 2011年 アメリカ CGとミニチュアやセットを駆使して作られた作品世界、単純で表層的なキャラクターとストーリー、そして3D。作品の構造自体がジョルジュ・メリエスへのオマージュになっている。彼が21世紀に生きていたらこんな映画を撮ったのかもしれないと思わせる。もっとも彼ならもっとあからさまにアンチ・リアリスティックな作り物の世界にしてしまっただろうが。 本国のアメリカでは視覚効...

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『金田一耕助の冒険』全編に溢れる虚構性

監督 大林宣彦 1979年 日本で『月世界旅行』が公開されてから74年が過ぎた頃『金田一耕助の冒険』は公開された。しかし、残念なことに1979年の人々は映画の虚構としての面白さを忘れてしまっていて、この映画はとても不評だったようだ。キネマ旬報のベストテンでは批評家からは無視されてなんと得票0、観客選出でも25位と低迷している。 当時はリアリズム以外は認めないとするような考え方が大勢を占めていたのだろうか? そ...

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『グロリア』活劇とリアリズム

監督:ジョン・カサヴェテス 出演:ジーナ・ローランズ 1980年 アメリカ映画 とにかくグロリアがカッコいい。小さな少年を守ってギャング相手に拳銃をぶっ放し、敵の事務所に単身乗り込んで交渉する。更にそんな彼女を突き動かしているのは無償の善意ときている。正義の味方だ。普通なら白々しい絵空事になってしまうこと請け合いだが、その映画の嘘にジーナ・ローランズの顔と身体、演技が強烈な存在感を与え、ジョン・カサヴェ...

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『チャイナタウン』観客の感性を全ての点で上回るミステリー映画の傑作

監督:ロマン・ポランスキー 脚本:ロバート・タウン 1974年 アメリカ映画 観客が理解するより先に展開していく物語、リアルで充実した描写、一見何気ない場面の連続でありつつ後にそのすべてが意味を持ってくる緊密な編集など、構成要素のどれもが優れていて、非常に完成度の高い映画だ。勿論、決して紳士には見えないジャック・ニコルソンや大柄でいかにも海千山千のジョン・ヒューストン、儚げで退廃的なフェイ・ダナウェイな...

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『吸血鬼』(1967) 曖昧なリアリズム

監督 ロマン・ポランスキー 出演 シャロン・テート 1967年 アメリカ・イギリス ホラーでありコメディでもある映画。オーソドックスな吸血鬼映画の筋や設定をそのままなぞりつつも、中身はドタバタコメディだ。 面白い描写があり、コメディ部分もそれなり楽しいのだが、作品としては平凡な出来に留まっているように見える。描写はリアリズムにもロマンティシズムにも振り切れないまま、作品の性質はシリアスとコメディの間を彷...

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『ローズマリーの赤ちゃん』コミカルで怖ろしい恐怖映画

監督 ロマン・ポランスキー 1968年 アメリカ映画 一人の女性が日常生活の中で徐々にサタニストたちに包囲されていき、悪魔の子を身籠らされる──という非常に怖い映画なのだが、なぜかホラーらしからぬ、おしゃれで楽しいコメディ映画のような要素も紛れ込んでいたりする。 ニューヨークの街とダコタ・ハウスを捉えた映像、崩した筆記体のクレジット、ミア・ファローのスキャットなどで構成されたオープニングは、洒落た恋愛映...

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ぱこぺら

Author:ぱこぺら
批評なので基本的にネタバレです。できるだけ下記の方針で書きます

・作品外の周辺情報を考慮せず作品内の表現に基づいて評価する
・歴史的な読み、評価から離れて現在の視点から論じる

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