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『麗猫伝説』映画の嘘

監督:大林宣彦 出演:入江たか子・風吹ジュン 1983年に火曜サスペンス劇場の一編として作られたテレビ映画で、1998年に劇場公開されている。完成度は極めて低いが、虚構性の露わなディティールや短い1ショットの美しさを備えた大林宣彦らしい一作だ。 戦前の大女優で戦後は化け猫女優として知られた入江たか子が出演していて、作品の内容も彼女へのオマージュとなっている。この映画の描く世界では、映画自体は現実の世界同様、...

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『可愛い悪魔』美しい仮構の世界

監督:大林宣彦 出演:ティナ・ジャクソン(川村ティナ)・秋吉久美子 1982年 手作り感ある仮構の作品世界と数々の特殊で美しいイメージに際立った魅力がある。 日本テレビの「火曜サスペンス劇場」の一作として作られた作品で、映像や音声の品質はテレビドラマそのものだし、大袈裟で不自然な演技、過剰に使用されて煩わしい背景音楽など、弱点も沢山ある。映画としては鑑賞に耐えられないレベルに見えるかもしれない。 しかし、...

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『ローズマリーの赤ちゃん』コミカルで怖ろしい恐怖映画

監督 ロマン・ポランスキー 1968年 アメリカ映画 一人の女性が日常生活の中で徐々にサタニストたちに包囲されていき、悪魔の子を身籠らされる──という非常に怖い映画なのだが、なぜかホラーらしからぬ、おしゃれで楽しいコメディ映画のような要素も紛れ込んでいたりする。 ニューヨークの街とダコタ・ハウスを捉えた映像、崩した筆記体のクレジット、ミア・ファローのスキャットなどで構成されたオープニングは、洒落た恋愛映...

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『マルホランド・ドライブ』解釈と意味作用

監督 デヴィッド・リンチ 2001年 アメリカ映画 この映画は様々な謎が提示されミステリーのように展開していくが、謎そのものは決して解き明かされない。つまり推理モノのように最後にすべてのピースが当てはまり全体の絵が完成されることでスッキリしたいという人には向いていない。しかし、それとは別の、もっと幻惑的な面白さを与えてくれる。 もしかしたらデヴィッド・リンチはミステリー作品に物足りなさを感じたことがあ...

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『告白』優れた描写と奇抜なプロット

監督/脚本:中島哲也 原作:湊 かなえ 出演: 松たか子・橋本愛・木村佳乃 2010年 異常で猟奇的な登場人物・ストーリーと優れた描写でできている映画。人間のネガティブな情動を露悪的に描き、観客の皮相な好奇心を刺激する。その種のものを好まない人には向かないだろう。サービス精神に溢れたエンターテイメントとも言えるし、安っぽく興味本位とも言えるかもしれない。 登場人物の設定やプロットは、その奇抜さで観客を引きつけ...

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『ゴッドファーザー』 巧緻を極めた表現と卓越した着想

監督 フランシス・フォード・コッポラ 1972年 アメリカ映画 我々人間の営んでいる社会生活からその生存競争としての本質を抽出したような内容、設定・物語・描写に通底するリアリズム、多彩な対照描写などがこの映画の魅力だ。また、表現面では個々の構成要素がそれぞれ堅実で優れていて、ほとんど欠点らしい欠点がない。そして、この映画はそれらの優れた特徴を観客に意識させない。斬新さや突出した技巧で観客を驚嘆させるこ...

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『悪い奴ほどよく眠る』 部分の魅力と低い完成度

監督 黒澤明 1960年 内容的には同時代の現実的問題を取り上げた映画だ。題材そのものがリアルな現実性を要求している。それに応えて描写はリアリズムを徹底する。しかし描かれる人物や出来事は極端に誇張されていて非現実的かつドラマチックだ。復讐劇を語る物語や派手な演出、リズミカルな編集によって非常に面白い劇映画になっている。が、リアルな描写と誇張された人物やストーリーが齟齬を起こしてアンバランスで奇妙な印象...

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『天国と地獄』(2) 人間の抽象化と悪の普遍性

監督:黒澤明 出演: 三船敏郎・山崎努・仲代達矢 1963年 描かれる内容が非常に興味深い。内容面では『天国と地獄』は傑出した二人の人物とその相克を描いた映画と言えるだろう。三船敏郎演じる権藤と山崎努演じる竹内の二人だ。後半部の展開では戸倉警部の意志が竹内の運命に対して決定的な影響を与えている一方で主人公の権藤はほとんど出番がなく点景人物のようにも見えるが、この映画がその心理を真に深く入念に描いていると言...

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『天国と地獄』(1) 多様で充実した表現

監督:黒澤明 出演: 三船敏郎・山崎努・仲代達矢 1963年 非常に重量感のある映画だ。 人間心理の深奥にある暗く重い情念を描いた内容、必要な情報を大量に入れ込みながらもスリリングに展開する脚本、静的な室内シーンと動的な列車シーンなど、場面によって異なる多彩な演出とその鮮やかな対照、背景音楽を抑制し現実音を利用する音の演出等々。これほど贅沢な映画はちょっと他にないかもしれない。 もし映画というものを知らな...

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『M』 悪とその処遇が炙り出す人と社会の矛盾

監督 フリッツ・ラング 1931年 ドイツ映画 この映画が描くのはあくまで一人の特異な人物と彼に対する様々な人間の反応であり、公私二つの性質の異なる集団がいかにして犯人に辿り着くかの過程だ。サスペンスやスリラーといった犯罪映画定番の要素を半ば素通りして物事の現実的なプロセスと人間そのものに執着する描写が重厚な印象を与える。 被害者の母親の詳細な描写、市民の素朴で些か無責任な反応、マスメディアの報道、警...

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ぱこぺら

Author:ぱこぺら
批評なので基本的にネタバレです。できるだけ下記の方針で書きます

・作品外の周辺情報を考慮せず作品内の表現に基づいて評価する
・歴史的な読み、評価から離れて現在の視点から論じる

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無意識の感情移入など専門的な視点から語られる映画評。個性的。

 

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