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『金田一耕助の冒険』全編に溢れる虚構性

監督 大林宣彦 1979年 日本で『月世界旅行』が公開されてから74年が過ぎた頃『金田一耕助の冒険』は公開された。しかし、残念なことに1979年の人々は映画の虚構としての面白さを忘れてしまっていて、この映画はとても不評だったようだ。キネマ旬報のベストテンでは批評家からは無視されてなんと得票0、観客選出でも25位と低迷している。 当時はリアリズム以外は認めないとするような考え方が大勢を占めていたのだろうか? そ...

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『ワイルド・アット・ハート』映画を笑うための映画

監督/脚本 デヴィッド・リンチ 1990年 アメリカ映画 タフな男のワイルドな生き様を描いた痛快アクション・バイオレンス巨編であり、感動の純愛ラブストーリーだ。が、そのあまりにストレート過ぎる表現はその種の映画のバカバカしさを観客に否応なく自覚させて爆笑を引き起こしてしまう。つまり、これはコメディ映画なのだ。B級映画のでたらめな表現を大真面目に模倣し、おしゃれなフィルムノワール(フランス語でこう呼ぶと作...

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『トーキング・ヘッド』映画のパロディ

監督 押井 守 1992年 押井守はタルコフスキーが好きだそうだが、実際に彼の撮る映画は、深刻で濃密なタルコフスキーより、どちらかと言うと軽薄で気まぐれな鈴木清順に似ている。好きな映画と作る映画が乖離しているのが面白い。 この映画もリアリティ皆無の不条理劇で、常識的な感性を持った観客にはそっぽを向かれてしまいそうな作風だ。  唐突な歌唱場面。後ろには何故か『月世界旅行』の月 アニメ映画の納期1ヶ月前に監...

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『殺しの烙印』特異な感性とキッチュ

監督 鈴木清順 1967年『殺しの烙印』は一般的にはとんでもない駄作と見做されている一方、一部では熱狂的に支持されてもいる。なぜそんなことになっているかは、実際に見てみれば一目瞭然、とても ”変な” 映画なのだ。作品世界や人物の設定は荒唐無稽で、物語も破綻しているのだが、被写体の造形、フレーミングと構図、照明の作り出す光と影の演出などが非常に魅力的でもある。当時の日活の社長はこの映画を見て「わからない映画...

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『ベティ・ブープ:ベティの笑へ笑へ』現実への哄笑

監督 デイブ・フライシャー アメリカ映画 1934年 ( 原題『BETTY BOOP HA! HA! HA!』) 同年の日本映画『隣の八重ちゃん』に登場人物がこの映画を見る場面が出てくる。また、筒井康隆はこの映画に触発されて『虚航船団』を書いたそうだ。 『ベティ・ブープ』シリーズの一本で7分程の小品。 実写とアニメが合成され、それぞれが表す現実の世界と虚構の世界を登場人物たちが何度も越境し、最後には虚構が現実を侵食してしまう。...

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『飾窓の女』 フリッツ・ラングの描く虚構としての世界

監督 フリッツ・ラング 1944年 アメリカ映画 夢の描き方が実にうまい。俗に言う夢オチ映画だが、その種の映画の多くがラストになって唐突にそれまでの展開を無効にして観客を白けさせるのに対して『飾窓の女』はまったく異なる。真逆だ。 『飾窓の女』ではそれまで現実として扱われていた描写と展開が、ラストに至って虚構としてこそより相応しいものであったことを観客が驚きとともに発見する。通常の夢オチ映画と違って夢と...

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『アイズ ワイド シャット』 ある事柄についてのシンプルな映画

監督 スタンリー・キューブリック 1999年 イギリス・アメリカ映画 キューブリックの映画は難解であるという世評があるが、決してそんなことはない。表現は曖昧さを徹底的に排除していて常に明快だ。逆に明快さこそが彼の特徴であり、作品そのものは極めて単純にできている。『時計じかけのオレンジ』などは明快過ぎて露悪的なほどだし、『2001年宇宙の旅』のシンプルな表現を複雑に、また哲学的に解釈しようとするのもあくまで...

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『ツィゴイネルワイゼン』 関係性の映画

監督:鈴木清順 脚本:田中陽造 1980年 この映画は現実と幻想、事実と虚構の境界が不分明で、それが特徴であり魅力でもある。一般的な映画では判明な出来事の連鎖としての物語があり、その起承転結に面白さがあるものだが、『ツィゴイネルワイゼン』はそういう映画ではない。曖昧模糊とした描写と物語が観客に解釈を求めて蠢く。それが意味作用のままに留まったり、様々な解釈に結びついたりするところに魅力がある。  開かれ...

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『鉄男』 塚本晋也の特異な個性

監督:塚本晋也 音楽:石川忠 1989年 この映画の内容はエログロナンセンスと形容できるものだが、それだけでは言い足りない。狂気と金属と走ることで埋め尽くされた描写、極端に短く目まぐるしいカット割り、金属音のような特殊な音響効果と背景音楽、異様で個性的な表現が横溢して観客を圧倒する。異常なほど迫力のある映画だ。何を物語り、何を描いているのかも理解できないのに観客は見ることをやめられない。いや、上品で良識...

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『皆殺しの天使』 不条理と円環的時間

監督 ルイス・ブニュエル 1962年 メキシコ映画 絵に描いたような不条理劇で、同じ描写の反復、不可解な物語や登場人物の心理など、その不条理さは形式から内容にまで及んでいる。作品世界の原理がいつまで待っても開示されない展開には苦痛を感じる人もいるかもしれない。しかしそこに面白さはない。幼児が原理を理解できないままに世界を体験するように、分からないことを分からないまま楽しむ映画だ。  繰り返される時間。...

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ぱこぺら

Author:ぱこぺら
批評なので基本的にネタバレです。できるだけ下記の方針で書きます

・作品外の周辺情報を考慮せず作品内の表現に基づいて評価する
・歴史的な読み、評価から離れて現在の視点から論じる

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