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『ツィゴイネルワイゼン』 関係性の映画

監督:鈴木清順 脚本:田中陽造 1980年 この映画は現実と幻想、事実と虚構の境界が不分明で、それが特徴であり魅力でもある。一般的な映画では判明な出来事の連鎖としての物語があり、その起承転結に面白さがあるものだが、『ツィゴイネルワイゼン』はそういう映画ではない。曖昧模糊とした描写と物語が観客に解釈を求めて蠢く。それが意味作用のままに留まったり、様々な解釈に結びついたりするところに魅力がある。  開かれ...

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『蜘蛛巣城』 完成された世界と物象化された人間

監督 黒澤明 1957年 『蜘蛛巣城』は美しく、完成された映画だ。そしてその作品の美的な完全さがそのまま自由の無さの表現となっているのが特徴的だ。完全であるということは即ち美であり、自由の存在する余地がないということでもある…少なくとも映画を見ている間は観客にそう信じさせずにはおかない。 構成要素は厳格にその役割を規定され、すべての映像、すべての時間が統制されている。現在で過去を挟み込む構成と、予言が有...

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『カリガリ博士』 世界を表現の対象とした映画

監督 ロベルト・ヴィーネ 1920年 ドイツ映画 この映画を見たことはなくとも『カリガリ博士』の名を聞いたことがないという人はいないだろう。『フランケンシュタイン』や『ジキル博士とハイド氏』は小説が原作だが、『カリガリ博士』はこの映画がオリジナルだ。ドイツ表現主義の代表的な作品で、現在に至るまで世界の映画に影響を与え続けている。日本においても衣笠貞之助の傑作『狂った一頁』はこの映画に触発されたものだ。...

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『ヴァンパイア』(カール・ドライヤー) 映像の面白さと古びた物語

監督 カール・テオドア・ドライヤー 1932年 フランス・ドイツ映画 (別題:『吸血鬼』) 動き回っていた影が本来の位置に戻り 実体に添って立ち上がる。 最初期の吸血鬼映画の一つ。自律的に動き回る影の表現、死者の目から見た風景、二重露光で分裂する人物など、視覚的な面白さの優った映画だ。 カール・ドライヤーは前作『裁かるるジャンヌ』の芸術的な成功にも関わらず、ここでは全く異なるアプローチ、技法を用いてい...

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『狼の血族』 性的暗喩と不条理に満ちたおとぎ話

監督 ニール・ジョーダン 1984年 イギリス映画 イメージ、世界観、物語、いずれもが独創的だ。本編の内容を夢として描き出し、その中に奇妙で美しいイメージ、現実とは異なる因果律に支配された不思議な世界とそこで展開する不条理な物語を見せてくれる。  夢の世界におけるロザリーン 冒頭、部屋に閉じこもり眠っている少女。同一カット内で照明が急速に昼を夜に変え、不自然に風が舞う。カメラは部屋に飾られた水兵や熊の...

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『ピクニックatハンギング・ロック』ピーター・ウィアー豪州時代の傑作

監督 ピーター・ウィアー 1975年 オーストラリア映画花を観察するミランダ。ソフトフォーカス、逆光、ピントがずれることで淡く映る草花、被写体としての日傘、白い服を着た少女、虫眼鏡で花を見るシチュエーション、あらゆる要素が美を志向している。 全編に漂う甘美で、官能的で、そして不思議な雰囲気こそが『ピクニックatハンギング・ロック』の最大の魅力だ。 靴下を脱ぐ少女の足、呼びかけを無視して裸足で歩き去ってい...

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『狂った一頁』 衣笠貞之助の傑作前衛映画

監督:衣笠貞之助 脚本:川端康成 1926年 独創的な映画だ。無声映画であり、かつ、字幕がない。美術、撮影、照明、編集などにおいて様々な実験的な表現がなされており、通常の劇映画、商業映画にない魅力を持っている。説明的なところが全くない映画だが、決して難解ではない。普通に見ていると主人公は病院の使用人で、彼が常に執着している女が彼の妻で、結婚する女は彼らの娘だろうと事後的に解釈出来てくる。 「日本で生ま...

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『コッポラの胡蝶の夢』 構成要素全ての混沌が魅力

監督 フランシス・フォード・コッポラ 2007年 アメリカ・ドイツ・イタリア・フランス・ルーマニア映画 日本語タイトルのセンスが悪いのは残念だが、内容は実に個性的で面白い。この映画の魅力は「格調高い」「深遠な」「重厚な」などといった種類のものではない。節操がない程の多様さと非現実のリアリティとでもいったものだ。様々な異なる顔を持った映画で、見る人によってその印象はまるで違ってくる。SF以前の幻想文学的な...

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『天使のたまご』全ての要素が表現を模索している

監督 押井守 1985年 この映画に一般的な意味で言う娯楽性は皆無だ。そして答のない映画でもある。問のように見える要素に満ちてはいるが答はない。この映画の表現が求めているのは意味作用であり、確定した意味ではない。それが成功しているかどうかは観客次第かもしれないが、一般的な娯楽映画にない面白さを備えた映画であるのは間違いない。 ほとんどすべてのカットが物語の説明に堕すことなく何らかの表現を模索している。...

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ぱこぺら

Author:ぱこぺら
批評なので基本的にネタバレです。できるだけ下記の方針で書きます

・作品外の周辺情報を考慮せず作品内の表現に基づいて評価する
・歴史的な読み、評価から離れて現在の視点から論じる

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