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『あの夏、いちばん静かな海。』 生命の素地が持つ美しさ

監督 北野武 1991年 平凡でありふれた人物と出来事、それをそのまま曝け出す描写、聾唖に設定した主人公、常在する海、全てにおいて着想が非凡だ。 この映画は特別な人物をその特別さゆえに価値あるものとして描くものではない。ありふれた人々のありふれた出来事を描いている。登場する人物も起こる出来事も現実そのもののように平凡でありきたりだ。卑小と言ってもいいだろう。この内容であれば、描写は小さな出来事をクロー...

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『わが青春に悔なし』 時間のコラージュと前後半の矛盾

監督:黒澤明 出演:原節子・藤田進 1946年 コラージュ的な編集が魅力的な映画だ。 家に訪ねてきた野毛が退出する際、彼が気になって仕方ない幸枝が見送るかどうかドアの前で逡巡する。その様子が10秒にも満たない間に4度もオーバーラップを重ねて描かれ、更にその後、一転して無表情に野毛を見送るショットが繋がれる。彼女の葛藤を端的に示して優れた心理描写となっているとともに、単純に表現としてとても魅力的だ。 幸枝が野...

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『ターミネーター』 健全な野心

監督 ジェームズ・キャメロン 1984年 アメリカ映画 アーノルド・シュワルツェネッガー演じる殺人マシンが大暴れする楽しいアクション映画。ただ、意外にも基本プロットは「平凡な女の子が危機的な状況に直面することで成長する話」といった感じで、どちらかというと女性向きの内容になっている。 その骨格だけ取り出してしまうと『千と千尋の神隠し』と見分けがつかない。どちらの作品も物語の展開の中で彼女たちは助けられる...

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『隣の八重ちゃん』 日常を磨きあげ輝かせた日本映画の傑作

監督:島津保次郎 出演:逢初夢子 1934年 島津保次郎が原作・脚本・監督の3役をこなしている。小市民映画の傑作として同時代から高く評価されていて当時のキネマ旬報ベストテンで2位に入っている。1995年のオールタイムベストでは100位、1999年には選外と順位を下げているが、単に知名度が下がっただけだろう。時代に評価が左右されるような映画ではない。 黒澤明は自選100本に選んでいるし、批評家の佐藤忠男が2012年にこう語っ...

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『コッポラの胡蝶の夢』 構成要素全ての混沌が魅力

監督 フランシス・フォード・コッポラ 2007年 アメリカ・ドイツ・イタリア・フランス・ルーマニア映画 日本語タイトルのセンスが悪いのは残念だが、内容は実に個性的で面白い。この映画の魅力は「格調高い」「深遠な」「重厚な」などといった種類のものではない。節操がない程の多様さと非現実のリアリティとでもいったものだ。様々な異なる顔を持った映画で、見る人によってその印象はまるで違ってくる。SF以前の幻想文学的な...

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『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』瑞々しい感情表現と美しい構成

監督 岩井俊二 1995年 繊細な感情表現、美しい映像、そして郷愁に満ちた物語に抗しがたい魅力がある。とりわけ岩井俊二の映画は感情の流れをうまく掴む一方、物語の骨格が曖昧なことがあるが、この映画には明確な構造の物語がある。そしてその物語が美しい。 ある時点から異なる筋を辿る2つのエピソードから全体が構成されていて、それが多様な魅力を生み出していく。 まず、その接続部分がいい。最初の物語が少女の不幸を目の...

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『時をかける少女(1983年)』 拙さが際立たせる手作りの美

監督:大林宣彦 出演:原田知世 1983年 全体が破綻していても美しい1カットの魅力が勝る映画もあるかもしれない。『時をかける少女』はそういう映画だ。 この映画を見始めると誰もがすぐに幾つかの欠点に気づくだろう。冒頭から役者の演技がひどく、台詞は棒読み、特殊効果も稚拙で、最初のシーンだけで観客にはこれがいかにひどい映画か分るはずだ。中学生が作ったのだろうかと真剣に疑う場面が頻出する。しかしそれらの場面...

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ぱこぺら

Author:ぱこぺら
批評なので基本的にネタバレです。できるだけ下記の方針で書きます

・作品外の周辺情報を考慮せず作品内の表現に基づいて評価する
・歴史的な読み、評価から離れて現在の視点から論じる

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