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『斬、』人間と世界の不調和

監督 塚本晋也 2018年 全体の状況より個々の被写体の細部に執着する視点に塚本晋也らしい魅力がある。熱せられた橙色の鉄、刀とその擬態音、首を握る手、竹とんぼやてんとう虫など。揺れるカメラが生み出す臨場感、塚本の演じる澤村のキャラクターなども魅力的だし、物語は独創的だ。 ただ、この映画は江戸時代の末期を描きつつ、そこに第二次世界大戦後の価値観を持ち込んでしまう。池松壮亮演じる主人公、都筑のキャラクター...

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『蜘蛛巣城』 完成された世界と物象化された人間

監督 黒澤明 1957年 『蜘蛛巣城』は美しく、完成された映画だ。そしてその作品の美的な完全さがそのまま自由の無さの表現となっているのが特徴的だ。完全であるということは即ち美であり、自由の存在する余地がないということでもある…少なくとも映画を見ている間は観客にそう信じさせずにはおかない。 構成要素は厳格にその役割を規定され、すべての映像、すべての時間が統制されている。現在で過去を挟み込む構成と、予言が有...

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『雄呂血』 視点と描写の乖離が美点となった映画

監督:二川 文太郎 脚本:寿々喜多呂九平 出演:阪東妻三郎 1925年 阪東妻三郎プロダクションの第一作目。後世の批評が語る通り、殺陣の当時における斬新さ、時流に合致しての大ヒット、それらによって時代劇を刷新したこと等が日本映画史上の意義だ。日本映画の発展に寄与したことは間違いないだろう。しかし、『雄呂血』には歴史的な価値に留まらない普遍的魅力がある。そのことについて語らなければ現代において改めてこの...

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『河内山宗俊』 現代においても新しい映画であり続けている

監督 山中貞雄 1936年 この映画は日本映画の歴史にとって価値があるというだけでなく、おそらく現代の一般的な観客にとっても面白く、色々な意味で驚かせてくれる映画だろう。新人女優の原節子も新鮮だし、斬新な編集、見事なアクションシーンもある。何よりキャラクターが魅力的だ。 山中貞雄の現存作品としては他2本より知名度が低いのはなぜだろう? 明解な悲劇や喜劇にカテゴライズできないせいだろうか? 脚本も描写も冒...

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『赤西蠣太』 洗練された技巧

監督 伊丹万作 1936年 日本映画の傑作だが、欠落している部分があり、保存状態もあまりよくない。ソフト化はVHS、LDのみのようだ。随分と不当な扱いのようにも思われるが、商品として成立しないのだろう。我々観客の鑑賞眼や文化に対する態度にも問題があるのかもしれない。しかしそうは言ってもフィルムは当然劣化していくだろうし、現在の保存状況が気になってしまう。文化庁は何かしているんだろうか? 映画は冒頭、2人の武...

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『人情紙風船』 高い完成度の裏側にある山中の未完成さ

監督 山中貞雄 1937年 江戸時代、江戸の町を舞台に当時の社会や経済などの制約下に人間が描かれる。その世界観は基本的に『丹下左膳余話 百万両の壺』と同じだ。違うのは『人情紙風船』が悲劇を志向している…というよりは意図的な喜劇を目指していないことだ。 『百万両の壺』では逆説的なカット繋ぎやあからさまな偶然によって妻が源三郎を見つけたりと喜劇的な部分の多くが作為的だった。妻を幸せな気持ちにさせる源三郎と左...

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『丹下左膳余話 百萬両の壺』 才気煥発な現代的コメディ

監督:山中貞雄 出演:大河内伝次郎 1935年 古い映画が時々、現代の映画より現代的だったり、ずっと出来もよかったりすることがあるが、これもそんな1本だ。現代の作り手は過去の文化遺産から出発できるのだから、理屈の上ではそんなことはありそうにないように思えるが、それがあるのが芸術という分野の面白いところだ。 喜劇であり軽い作品だが、軽薄だったり浅はかであったりはしない。この映画では現実と同じように人の死や...

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『影武者』 (1) 黒澤明後期の特異な傑作

監督 黒澤明 1980年 非常に独創的で特殊な映画だ。なかなか語る言葉も見つからない。 そのせいか公開時から今に至るまでずっと賛否両論が続いているようだ。その意味では評価の決定している『生きる』や『七人の侍』などより現代においてはもっとも活きのいい黒澤映画と言えなくもない。 この映画の変わっている点はいくつもあるが、まずその描写が特異だ。 一見アクションが見どころの時代劇のような外見だが実際は全く逆で...

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ぱこぺら

Author:ぱこぺら
批評なので基本的にネタバレです。できるだけ下記の方針で書きます

・作品外の周辺情報を考慮せず作品内の表現に基づいて評価する
・歴史的な読み、評価から離れて現在の視点から論じる

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