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『腰辨頑張れ』成瀬巳喜男、現存最古の監督作

監督/原作:成瀬巳喜男 1931年 成瀬巳喜男8本目の監督作。現存最古の成瀬作品でもある。今日の目で見ると月並みなストーリーだが、単なるドタバタコメディに留まらず、生きた人間の悲哀を盛り込んだことが当時は高く評価されている。'30年代初頭、日本映画がまだ発展途上にあり、成瀬自身もキャリアをスタートして1年ほどの頃だ。 そして統一された全体としての作品の出来は平凡かもしれないが、細部には魅力も沢山ある。日常の...

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『まごころ』人と視点の移動

監督/脚本:成瀬巳喜男 出演:入江たか子・加藤照子・悦ちゃん 1939年 人の移動を描いた映画だ。常に動き続ける人と視点とがこの映画の大きな魅力になっている。 冒頭から「大日本愛國婦人會」の人々がゾロゾロと列をなして移動していく。カメラがその中の婦人二人を追う。と、橋の上で彼女たちが女の子二人組と行き交う。すると今度は女の子たちを追って視点は逆向きに移動していく。もう、人やカメラの動きに快感が伴っている...

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『ジキル博士とハイド氏 (1932)』優れた人物設定と多様な描写

監督:ルーベン・マムーリアン 脚本:パーシー・ヒース/サミュエル・ホッフェンシュタイン 出演:フレデリック・マーチ 1932年 アメリカ映画 公開時、もっとも注目され評価されたのは同一人物によるジキルとハイドの演技、特撮を使った変身描写などだったようだが、今日ではそれらが最も古びた要素になってしまっている。真正面からアップで捉えた懸命な顔の演技は少しコミカルに見え、特撮は陳腐で特に印象的なものではなくなっ...

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『残菊物語』卓越した描写と偶有性

監督 溝口健二 1939年  二人の馴れ初めは右向きの移動撮影、追い出された  お徳は左向きのパンで去っていく。 シーン内での時間・空間の連続性の維持が徹底されていて、その完成度が異常に高い。『浪華悲歌』の頃、要所要所で使われて効果を発揮していた ”場” の演出がほぼ全編に拡大され、緊張感を漲らせている。その張り詰めた空気は観客にも伝わってくるほどで、撮影時の演者とスタッフの緊張はとんでもないものだったろ...

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『愛より愛へ』他愛なさを称賛させずにおかない

監督 島津保次郎 脚本 大庭秀雄 出演 高杉早苗 1938年 古い映画だが現代においても誰もが気軽に楽しめる良質の娯楽映画だ。 物語は戦前の家制度を背景に階級の違う若い男女のカップルを描く。定石通りに破局や自殺を仄めかす描写を挿入しつつ展開し、観客にドラマティックな悲劇を予感させる。ところが、最後になってそれまでの深刻な展開を台無しにして唐突なハッピーエンドに収束してしまう。もちろん観客は拍子抜けだ。し...

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『朗らかに歩め』小津の別系譜

監督 小津安二郎 1930年 冒頭、接岸した大きな船を捉えたカメラがトラックバックしてゆき、手前に並んでいる自動車を次々に入れ込んでいく。なぜか自動車が斜めに並んで停まっているのは、勿論、この美しい構図を作るためだろう。その前を今カメラが通ってきたのと逆方向に群衆が全速力で奥に走っていく。そこから次々とカットを変え、場所を変えて、カメラは走る群衆を捉えていく。カメラと被写体の動き、構図、カット割り、全...

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『ゲームの規則』重厚な内容の軽快な喜劇映画

監督 ジャン・ルノワール 1939年 フランス映画『ゲームの規則』という表題は非常にアイロニカルだ。この映画は登場人物の言葉と行動がルールを逸脱していく描写を積み重ねていき、それが上流階級の、とか、この映画の、という限定に留まらず、我々観客を含めた全ての人間が生きているところの ”ゲーム” そのものの規則を逆説的に明らかにしていく。 そしてその規則を外れたところにこそ、人間の本性があるのだと語りかける……。...

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『ベティ・ブープ:ベティの笑へ笑へ』現実への哄笑

監督 デイブ・フライシャー アメリカ映画 1934年 ( 原題『BETTY BOOP HA! HA! HA!』) 同年の日本映画『隣の八重ちゃん』に登場人物がこの映画を見る場面が出てくる。また、筒井康隆はこの映画に触発されて『虚航船団』を書いたそうだ。 『ベティ・ブープ』シリーズの一本で7分程の小品。 実写とアニメが合成され、それぞれが表す現実の世界と虚構の世界を登場人物たちが何度も越境し、最後には虚構が現実を侵食してしまう。...

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『浪華悲歌(なにわえれじい)』偶有性と女優の演技

監督:溝口健二 脚本:依田義賢 出演:山田五十鈴 1936年 物語を語る中に一人の女性の様々な側面を描き出したシナリオと、気弱そうに見える女性がタバコを吐き捨てる「不良少女」になるまでを演じた山田五十鈴が、まず最初に気づくこの映画の魅力だ。 山田演じるアヤコは貧しく荒んだ家庭の娘であり、同年代の恋人がいる若い女性だ。一方で豪華なアパートに囲われた愛人であり、男を騙す悪女でもある。伝統的な着物姿からモダン...

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『東京の女』優れた表現と空虚な物語

監督:小津安二郎 出演:岡田嘉子・江川宇礼雄・田中絹代 1933年壁一面の時計が物語上の意味を持たず、あくまで表現としての魅力を発露する。 ほぼテクニックだけで出来ているような映画。内容的には無意味な悲劇だが、語り口が簡潔明瞭で決して観客を退屈させないし、逆にそのテクニカルな表現の面白さを堪能させてくれる。 二人暮らしの仲のいい姉弟がいて、姉のちか子がタイピストをして生計を立て、弟の学費や小遣いを出してや...

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ぱこぺら

Author:ぱこぺら
批評なので基本的にネタバレです。できるだけ下記の方針で書きます

・作品外の周辺情報を考慮せず作品内の表現に基づいて評価する
・歴史的な読み、評価から離れて現在の視点から論じる

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