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『一番美しく』決して出来はよくないが正直で初々しい作品

脚本/監督:黒澤明 出演:矢口陽子・入江たか子 1944年 矢口陽子演じる渡辺ツルが踏切で自分のミスに気づく瞬間や、調整途中のレンズを横に置いたまま新しいレンズの調整に入ってしまう様子がフラッシュ・バックで挿入される。陳腐ではあっても分かり易い表現で、ストーリーが誰にも誤解の余地のない明瞭さで観客に伝えられる。どうやら黒澤としては前作『姿三四郎』に引き続き、老若男女を対象とした娯楽映画のつもりだったらしい...

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『嫁ぐ日まで』技巧が支える親しみ易さ

監督/脚本:島津保次郎 出演:原節子・矢口陽子・杉村春子 1940年 平凡な日常を新鮮で魅力的なものに刷新してしまう島津の資質が十二分に発揮された一本。内容、表現ともに新しい試みが見られないのは少し寂しいが、そのかわりに、ホームグラウンドで羽を伸ばした、寛いだ楽しさがある。 内容的には当時の結婚や家族関係が主に描かれる。登場人物は皆、自分の感情や将来設計より家の存続とその中で果たすべき役割を優先して考え...

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『秀子の車掌さん』「爽かなソーダ水みたいな作品」

監督:成瀬巳喜男 出演:高峰秀子 1941年 当時のアイドル映画と言っていいだろう。成瀬巳喜男は仕事を選ばない人だったらしい。ただ普通のアイドル映画とは違う。主演は17歳にしてすでに57本の出演作がある後の大女優、高峰秀子だ。現在から遡って見ると成瀬・高峰の初コンビとして却って注目してしまう。しかし映画はほとんど内容らしい内容もなく、高峰の魅力に依存するわけでもない。非常に淡白な作品だ。 田舎の路線バスの車...

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『飾窓の女』 フリッツ・ラングの描く虚構としての世界

監督 フリッツ・ラング 1944年 アメリカ映画 夢の描き方が実にうまい。俗に言う夢オチ映画だが、その種の映画の多くがラストになって唐突にそれまでの展開を無効にして観客を白けさせるのに対して『飾窓の女』はまったく異なる。真逆だ。 『飾窓の女』ではそれまで現実として扱われていた描写と展開が、ラストに至って虚構としてこそより相応しいものであったことを観客が驚きとともに発見する。通常の夢オチ映画と違って夢と...

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『市民ケーン』 形式の魅力と映画としての魅力

監督 オーソン・ウェルズ 1941年 アメリカ映画 1941年の映画だが全く古びていない。古びるほどの内容を持っていないとも言えるかもしれない。『市民ケーン』は描かれる内容が特別に興味深いというのではなく、技巧を駆使した表現によってこそ素晴らしい映画となっているためだ。映画が単なる物語ではないということを示す格好の例であり、また、文学や演劇ではない映画の、映画的な面白さに満ちている。 光と影が交錯し、人々...

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『わが青春に悔なし』 時間のコラージュと前後半の矛盾

監督:黒澤明 出演:原節子・藤田進 1946年 コラージュ的な編集が魅力的な映画だ。 家に訪ねてきた野毛が退出する際、彼が気になって仕方ない幸枝が見送るかどうかドアの前で逡巡する。その様子が10秒にも満たない間に4度もオーバーラップを重ねて描かれ、更にその後、一転して無表情に野毛を見送るショットが繋がれる。彼女の葛藤を端的に示して優れた心理描写となっているとともに、単純に表現としてとても魅力的だ。 幸枝が野...

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『父ありき』 編集の飛躍

監督 小津安二郎 1942年 時間表現が優れている。 小津の作品としては前年の『戸田家の兄妹』で父親が倒れた後、一気にその葬式の場面にとぶ編集があったが、『父ありき』ではその手法がすでに自家薬籠中の物となっている。 笠智衆が生徒に修学旅行の話をすると次のカットでもう鎌倉大仏の前での記念撮影になり、芦ノ湖で生徒に事故が起こったらしいという場面からその生徒の葬儀の場面に跳ぶ。省略を含んだ編集が、観客の感性...

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『姿三四郎』黒澤明のデビュー作・動きと悪を描く作家の登場

監督 黒澤明 1943年 この映画は何よりもまず動きがいい。また、全編表現への意欲に満ちている。現実の物理法則をはみ出してしまうのは流石にやり過ぎに見えるが、実に元気のいい新人監督だ。観念的な内容もその単純さも、若さと健全さを感じさせる。悪を描こうとしているのも特徴的だ。表現の面での動き、内容面での悪はそれまでの日本映画の流れからは出て来ない突然変異的な登場だ。 まず、動きという極めて映画的な魅力を日...

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ぱこぺら

Author:ぱこぺら
批評なので基本的にネタバレです。できるだけ下記の方針で書きます

・作品外の周辺情報を考慮せず作品内の表現に基づいて評価する
・歴史的な読み、評価から離れて現在の視点から論じる

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