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『鉄男』 塚本晋也の特異な個性

監督:塚本晋也 音楽:石川忠 1989年 この映画の内容はエログロナンセンスと形容できるものだが、それだけでは言い足りない。狂気と金属と走ることで埋め尽くされた描写、極端に短く目まぐるしいカット割り、金属音のような特殊な音響効果と背景音楽、異様で個性的な表現が横溢して観客を圧倒する。異常なほど迫力のある映画だ。何を物語り、何を描いているのかも理解できないのに観客は見ることをやめられない。いや、上品で良識...

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『狼の血族』 性的暗喩と不条理に満ちたおとぎ話

監督 ニール・ジョーダン 1984年 イギリス映画 イメージ、世界観、物語、いずれもが独創的だ。本編の内容を夢として描き出し、その中に奇妙で美しいイメージ、現実とは異なる因果律に支配された不思議な世界とそこで展開する不条理な物語を見せてくれる。  夢の世界におけるロザリーン 冒頭、部屋に閉じこもり眠っている少女。同一カット内で照明が急速に昼を夜に変え、不自然に風が舞う。カメラは部屋に飾られた水兵や熊の...

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『ターミネーター』 健全な野心

監督 ジェームズ・キャメロン 1984年 アメリカ映画 アーノルド・シュワルツェネッガー演じる殺人マシンが大暴れする楽しいアクション映画。ただ、意外にも基本プロットは「平凡な女の子が危機的な状況に直面することで成長する話」といった感じで、どちらかというと女性向きの内容になっている。 その骨格だけ取り出してしまうと『千と千尋の神隠し』と見分けがつかない。どちらの作品も物語の展開の中で彼女たちは助けられる...

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『エリミネーターズ』 B級映画のB級映画らしい面白さ

1986年 アメリカ映画 低予算で作られているSF映画で、びっくりするほど出来が悪い。しかし、つまらないかというとそうとも限らない。あからさまに不適切な処理が逆に面白く、ツボに嵌れば爆笑できる。 いきなり描かれる飛行機事故となぜかローマ時代の兵士と爆発。その唐突で荒唐無稽な展開、半端な描写、安っぽい特撮と派手な音楽。見紛うことないB級映画だ。普通なら脚本、撮影、造形等々いずれかの部門が格好をつけて少しは...

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『ノスタルジア』 狂気と描写への執着

監督 アンドレイ・タルコフスキー 1983年 イタリア・ソ連合作映画 描写が素晴らしい。しかし冗長さも伴っている。そして物語は特異だ。ロシアの詩人アンドレイが取材のためにイタリアを巡り、少し俗っぽい通訳の女性や狂信的キリスト教徒のドメニコとの交流が主に描かれるのだが、ドメニコはローマで意味不明な演説をした後焼身自殺し、アンドレイは世界を救うために温泉を蝋燭を持って渡る。不可解であり独創的だ。 この映画...

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『サクリファイス』 実体と表現の間

監督 アンドレイ・タルコフスキー 1986年 スウェーデン映画 この映画は世界観、表象、物語…つまり何もかもがキリスト教的だが、キリスト教礼賛ではない。人類が持っている宗教的な心情、信仰や迷信への心的傾向がこの映画においてはキリスト教に像を結んでいるということだ。テンポの遅ささえ気にしなければ誰もが楽しめる。描写も物語も独創的でとても面白い。特にタルコフスキーの映画としては偏りがちだった描写が抑制され、...

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『バック・トゥ・ザ・フューチャー』娯楽映画の傑作

監督 ロバート・ゼメキス 1985年 アメリカ映画 最初から最後までとにかく楽しいコメディ映画。娯楽と銘打った映画が実際はちっとも面白くないことも多く、「娯楽映画」と聞くと「またどうせつまらない映画だろう」などと考えてしまいがちだが、この映画は言葉本来の意味での娯楽映画だ。 シナリオの面白さは傑出しているし、全編に散りばめられたギャグがまた一々可笑しい。描写においても、素朴で長閑な「Two Pines」と現代の...

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『ブレードランナー』 諸要素から構成された世界観の魅力

監督 リドリー・スコット 1982年 アメリカ映画 発展した未来都市に人類の衰退を重ね合わせた世界観、その魅力がこの映画では決定的だ。世界の黄昏のような時代、退廃した都市、現実に埋没した平凡な人々。全ての要素に先がなく、滅びゆくものに特有の美を備えている。その暗く陰鬱な未来イメージは時間の流れを取り込み、観客の今を感じさせる点で数あるSF映画の中でも傑出している。 主人公の設定も控えめで、決してその世界...

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『影武者』 (1) 黒澤明後期の特異な傑作

監督 黒澤明 1980年 非常に独創的で特殊な映画だ。なかなか語る言葉も見つからない。 そのせいか公開時から今に至るまでずっと賛否両論が続いているようだ。その意味では評価の決定している『生きる』や『七人の侍』などより現代においてはもっとも活きのいい黒澤映画と言えなくもない。 この映画の変わっている点はいくつもあるが、まずその描写が特異だ。 一見アクションが見どころの時代劇のような外見だが実際は全く逆で...

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『天使のたまご』全ての要素が表現を模索している

監督 押井守 1985年 この映画に一般的な意味で言う娯楽性は皆無だ。そして答のない映画でもある。問のように見える要素に満ちてはいるが答はない。この映画の表現が求めているのは意味作用であり、確定した意味ではない。それが成功しているかどうかは観客次第かもしれないが、一般的な娯楽映画にない面白さを備えた映画であるのは間違いない。 ほとんどすべてのカットが物語の説明に堕すことなく何らかの表現を模索している。...

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ぱこぺら

Author:ぱこぺら
批評なので基本的にネタバレです。できるだけ下記の方針で書きます

・作品外の周辺情報を考慮せず作品内の表現に基づいて評価する
・歴史的な読み、評価から離れて現在の視点から論じる

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