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『ワイルド・アット・ハート』映画を笑うための映画

監督/脚本 デヴィッド・リンチ 1990年 アメリカ映画 タフな男のワイルドな生き様を描いた痛快アクション・バイオレンス巨編であり、感動の純愛ラブストーリーだ。が、そのあまりにストレート過ぎる表現はその種の映画のバカバカしさを観客に否応なく自覚させて爆笑を引き起こしてしまう。つまり、これはコメディ映画なのだ。B級映画のでたらめな表現を大真面目に模倣し、おしゃれなフィルムノワール(フランス語でこう呼ぶと作...

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『トーキング・ヘッド』映画のパロディ

監督 押井 守 1992年 押井守はタルコフスキーが好きだそうだが、実際に彼の撮る映画は、深刻で濃密なタルコフスキーより、どちらかと言うと軽薄で気まぐれな鈴木清順に似ている。好きな映画と作る映画が乖離しているのが面白い。 この映画もリアリティ皆無の不条理劇で、常識的な感性を持った観客にはそっぽを向かれてしまいそうな作風だ。  唐突な歌唱場面。後ろには何故か『月世界旅行』の月 アニメ映画の納期1ヶ月前に監...

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『Love Letter』客観描写による主観の表現

監督/脚本:岩井俊二 出演:中山美穂・豊川悦司・酒井美紀・柏原崇 1995年 郷愁そのもののような映画。光や雪の白さ、甘美な旋律、過去の追想などによって郷愁という感情を映画という形式に落とし込み『ラブレター』と名づけた、といった感じだ。 映画は始まりから映像も音楽も申し分なく美しい。横たわった中山美穂の顔や雪を払う手など、極端なクローズアップが連続し、街に降りていく彼女を画面の片隅に小さく捉えた長いロングシ...

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『トゥルーマン・ショー』 世界は舞台、人は役者

監督 ピーター・ウィアー 1998年 アメリカ映画 閉じた虚構の世界に生きる男が自由と他者を求めて現実の世界を目指す姿を描いた映画だ。その物語自体とても面白い。ピーター・ウィアーの持ち味である叙情性や湿度の高い映像の美しさもそれをより高めている。そこにさらに他者の人生を娯楽の手段とする人々などブラックユーモアとしての側面、虚構の世界やその現実との関係を描いたメタ・フィクション的な性質もある。それぞれの...

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『あの夏、いちばん静かな海。』 生命の素地が持つ美しさ

監督 北野武 1991年 平凡でありふれた人物と出来事、それをそのまま曝け出す描写、聾唖に設定した主人公、常在する海、全てにおいて着想が非凡だ。 この映画は特別な人物をその特別さゆえに価値あるものとして描くものではない。ありふれた人々のありふれた出来事を描いている。登場する人物も起こる出来事も現実そのもののように平凡でありきたりだ。卑小と言ってもいいだろう。この内容であれば、描写は小さな出来事をクロー...

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『アイズ ワイド シャット』 ある事柄についてのシンプルな映画

監督 スタンリー・キューブリック 1999年 イギリス・アメリカ映画 キューブリックの映画は難解であるという世評があるが、決してそんなことはない。表現は曖昧さを徹底的に排除していて常に明快だ。逆に明快さこそが彼の特徴であり、作品そのものは極めて単純にできている。『時計じかけのオレンジ』などは明快過ぎて露悪的なほどだし、『2001年宇宙の旅』のシンプルな表現を複雑に、また哲学的に解釈しようとするのもあくまで...

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『トータル・リコール』 趣味の悪さと知的な面白さ

監督 ポール・バーホーベン 1990年 アメリカ映画 大がかりなSF映画。ちょっと悪趣味なところがあるが、そこさえ気にならなければよくできた面白い娯楽作品だ。原作者は『ブレードランナー』や『マイノリティ・リポート』と同じフィリップ・K・ディックで、この3本の中では現実と虚構を等価にしてしまうような彼の持ち味が一番ストレートに再現されている。原作にあった詩情やユーモアは消えて、かなり直接的、どぎついと言って...

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『ソナチネ』 北野武4本目の監督作 世界の余剰としての生を描く

監督 北野武 1993年 この映画では人間のあらゆる行為…その生や死からも意義が奪われている。生には動機と目的が欠けていて、死は唐突で無意味だ。元々意味や価値といったものは人間が持ち込んだもので世界の属性ではないから、『ソナチネ』は普段我々の目にしない客観的な世界の姿を見せてくれているわけだ。この映画の描く客観的な世界で生は無意味な余剰となり、その自由さが我々観客を魅了する。 ヤクザの抗争と内紛を描いた...

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『レザボア・ドッグス』 B級映画の顔を持った一級品

監督 クエンティン・タランティーノ 1992年 アメリカ映画 初監督作でいきなり才能が爆発している。優れた映画監督にはキャリア初期に傑作を作ってしまうタイプと徐々に才能を発揮してやがて傑作を撮るタイプがあるとしたら、タランティーノは明かに前者だ。 様々な引用で構成されつつ出来上がった映画はしかし見事に個性的だ。数々の影響や引用がタランティーノ本人をはじめとする多くの人によって語られている映画でもあるが...

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『キッズ・リターン』 時間を描こうとする着想、表現が独創的

監督 北野武 1996年 細やかな人物描写と時間表現が美しい。常に省略を含んだ描写が観客の想像力によって絶えず曖昧に補完され続ける。それが映画的な魅力に満ちた素晴らしい表現になっている。 社会の片隅に生きる人々を描いた映画だが、その人物描写には実感が伴っていて、時間とともに変遷するキャラクターとその行末を丁寧に拾っていくのが作り手の愛情を感じさせる。 一見かつてと変わらない風景だが、細部の変化が時の流れ...

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ぱこぺら

Author:ぱこぺら
批評なので基本的にネタバレです。できるだけ下記の方針で書きます

・作品外の周辺情報を考慮せず作品内の表現に基づいて評価する
・歴史的な読み、評価から離れて現在の視点から論じる

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