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『朗らかに歩め』小津の別系譜

監督 小津安二郎 1930年 冒頭、接岸した大きな船を捉えたカメラがトラックバックしてゆき、手前に並んでいる自動車を次々に入れ込んでいく。なぜか自動車が斜めに並んで停まっているのは、勿論、この美しい構図を作るためだろう。その前を今カメラが通ってきたのと逆方向に群衆が全速力で奥に走っていく。そこから次々とカットを変え、場所を変えて、カメラは走る群衆を捉えていく。カメラと被写体の動き、構図、カット割り、全...

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『東京の女』優れた表現と空虚な物語

監督:小津安二郎 出演:岡田嘉子・江川宇礼雄・田中絹代 1933年壁一面の時計が物語上の意味を持たず、あくまで表現としての魅力を発露する。 ほぼテクニックだけで出来ているような映画。内容的には無意味な悲劇だが、語り口が簡潔明瞭で決して観客を退屈させないし、逆にそのテクニカルな表現の面白さを堪能させてくれる。 二人暮らしの仲のいい姉弟がいて、姉のちか子がタイピストをして生計を立て、弟の学費や小遣いを出してや...

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『父ありき』 編集の飛躍

監督 小津安二郎 1942年 時間表現が優れている。 小津の作品としては前年の『戸田家の兄妹』で父親が倒れた後、一気にその葬式の場面にとぶ編集があったが、『父ありき』ではその手法がすでに自家薬籠中の物となっている。 笠智衆が生徒に修学旅行の話をすると次のカットでもう鎌倉大仏の前での記念撮影になり、芦ノ湖で生徒に事故が起こったらしいという場面からその生徒の葬儀の場面に跳ぶ。省略を含んだ編集が、観客の感性...

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『淑女は何を忘れたか』表層の魅力と普遍性

監督:小津安二郎 出演:桑野通子・栗島すみ子・斎藤達雄・佐野周二 音楽:伊藤宣二 1937年 喜劇風味の軽い作品。夫に不満げな妻と恐妻家の夫の家庭に、妻の姪っ子がやって来て一波乱起こし、結果的に夫妻の仲を好転させて去っていく。 たったこれだけの他愛ない物語の中に、誰しもが経験したことのあるような微妙な心の動きが軽く、しかし繊細に描き出される。小さく可愛いストーリーに軽妙洒脱な描写が合わさって、非常に楽しい映...

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『一人息子』 完成しつつあるスタイルと取り残された編集

監督 小津安二郎 1936年 1936年の作品。様々な出来事が描かれつつ物語としての展開がないという、一般的な意味で言う特殊さと小津の特徴がとてもよく出ている映画だ。そして最後に醸し出される時の流れも。 冒頭、製糸工場で働くおつねが貧しく苦しい生活の中、将来のために息子良助の中学進学を許し、良助と先生が喜ぶという場面から映画は始まる。 しかしこの映画の構成は変則的だ。冒頭で登場人物の動機を描いた後、彼らの...

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『非常線の女』 仮構世界の魅力と軽薄さ

監督 小津 安二郎 1933年 アメリカのギャング映画のパロディのような作品。1933年当時の日本にアメリカ映画の風景、文化、キャラクターを移植している。人物表現は薄っぺらく、作品世界はでたらめに設定され、ストーリーも荒唐無稽にできている。その一方で、描写の素晴らしさだけは最後まで一貫していて、その中には後年の小津作品には見られないカメラと被写体の動きの面白さもある。一級品の顔を持ったB級映画といったところ...

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ぱこぺら

Author:ぱこぺら
批評なので基本的にネタバレです。できるだけ下記の方針で書きます

・作品外の周辺情報を考慮せず作品内の表現に基づいて評価する
・歴史的な読み、評価から離れて現在の視点から論じる

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