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『一番美しく』決して出来はよくないが正直で初々しい作品

脚本/監督:黒澤明 出演:矢口陽子・入江たか子 1944年 矢口陽子演じる渡辺ツルが踏切で自分のミスに気づく瞬間や、調整途中のレンズを横に置いたまま新しいレンズの調整に入ってしまう様子がフラッシュ・バックで挿入される。陳腐ではあっても分かり易い表現で、ストーリーが誰にも誤解の余地のない明瞭さで観客に伝えられる。どうやら黒澤としては前作『姿三四郎』に引き続き、老若男女を対象とした娯楽映画のつもりだったらしい...

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『悪い奴ほどよく眠る』 部分の魅力と低い完成度

監督 黒澤明 1960年 内容的には同時代の現実的問題を取り上げた映画だ。題材そのものがリアルな現実性を要求している。それに応えて描写はリアリズムを徹底する。しかし描かれる人物や出来事は極端に誇張されていて非現実的かつドラマチックだ。復讐劇を語る物語や派手な演出、リズミカルな編集によって非常に面白い劇映画になっている。が、リアルな描写と誇張された人物やストーリーが齟齬を起こしてアンバランスで奇妙な印象...

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『天国と地獄』(2) 人間の抽象化と悪の普遍性

監督:黒澤明 出演: 三船敏郎・山崎努・仲代達矢 1963年 描かれる内容が非常に興味深い。内容面では『天国と地獄』は傑出した二人の人物とその相克を描いた映画と言えるだろう。三船敏郎演じる権藤と山崎努演じる竹内の二人だ。後半部の展開では戸倉警部の意志が竹内の運命に対して決定的な影響を与えている一方で主人公の権藤はほとんど出番がなく点景人物のようにも見えるが、この映画がその心理を真に深く入念に描いていると言...

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『天国と地獄』(1) 多様で充実した表現

監督:黒澤明 出演: 三船敏郎・山崎努・仲代達矢 1963年 非常に重量感のある映画だ。 人間心理の深奥にある暗く重い情念を描いた内容、必要な情報を大量に入れ込みながらもスリリングに展開する脚本、静的な室内シーンと動的な列車シーンなど、場面によって異なる多彩な演出とその鮮やかな対照、背景音楽を抑制し現実音を利用する音の演出等々。これほど贅沢な映画はちょっと他にないかもしれない。 もし映画というものを知らな...

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『蜘蛛巣城』 完成された世界と物象化された人間

監督 黒澤明 1957年 『蜘蛛巣城』は美しく、完成された映画だ。そしてその作品の美的な完全さがそのまま自由の無さの表現となっているのが特徴的だ。完全であるということは即ち美であり、自由の存在する余地がないということでもある…少なくとも映画を見ている間は観客にそう信じさせずにはおかない。 構成要素は厳格にその役割を規定され、すべての映像、すべての時間が統制されている。現在で過去を挟み込む構成と、予言が有...

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『わが青春に悔なし』 時間のコラージュと前後半の矛盾

監督:黒澤明 出演:原節子・藤田進 1946年 コラージュ的な編集が魅力的な映画だ。 家に訪ねてきた野毛が退出する際、彼が気になって仕方ない幸枝が見送るかどうかドアの前で逡巡する。その様子が10秒にも満たない間に4度もオーバーラップを重ねて描かれ、更にその後、一転して無表情に野毛を見送るショットが繋がれる。彼女の葛藤を端的に示して優れた心理描写となっているとともに、単純に表現としてとても魅力的だ。 幸枝が野...

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『姿三四郎』黒澤明のデビュー作・動きと悪を描く作家の登場

監督 黒澤明 1943年 この映画は何よりもまず動きがいい。また、全編表現への意欲に満ちている。現実の物理法則をはみ出してしまうのは流石にやり過ぎに見えるが、実に元気のいい新人監督だ。観念的な内容もその単純さも、若さと健全さを感じさせる。悪を描こうとしているのも特徴的だ。表現の面での動き、内容面での悪はそれまでの日本映画の流れからは出て来ない突然変異的な登場だ。 まず、動きという極めて映画的な魅力を日...

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『影武者』 (2) 詳細解説と分析

監督 黒澤明 1980年詳説1 撮影と視点 『影武者』ではカメラの冷淡さが特に際立っているが、それはファーストシーンからすでに異様だ。人物から遠い位置にカメラを固定したまま6分以上の1カットのみで構成されている。同じ男が3人いて1人だけ影が映っているのが信玄だ。残り2人は弟の信廉と名もない盗人、それぞれ影武者と影武者候補だ。実体と影というモチーフを端的に映像で語っているのがいい。対話ののち、信玄が出ていくと...

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『影武者』 (1) 黒澤明後期の特異な傑作

監督 黒澤明 1980年 非常に独創的で特殊な映画だ。なかなか語る言葉も見つからない。 そのせいか公開時から今に至るまでずっと賛否両論が続いているようだ。その意味では評価の決定している『生きる』や『七人の侍』などより現代においてはもっとも生きのいい黒澤映画と言えなくもない。 この映画の変わっている点はいくつもあるが、まずその描写が特異だ。 一見アクションが見どころの時代劇のような外見だが実際は全く逆で...

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『生きものの記録』フレーム内にひしめき合う演技の合奏

監督 黒澤明 1955年 群像劇が素晴らしい。それを生み出す人物の配置、キャラクター、その描写、中でも主人公である中島のキャラクター造形、三船敏郎の演技は特にいい。不器用な愛情、独善性、旺盛な生命力等々、実によく描かれていて魅力的だ。このキャラクターを見られるだけでも価値のある映画。 実際これは彼の映画と言ってもいいだろう。あらかじめ用意された物語などなくても彼の思考、言動を追っていくことでそれがその...

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ぱこぺら

Author:ぱこぺら
批評なので基本的にネタバレです。できるだけ下記の方針で書きます

・作品外の周辺情報を考慮せず作品内の表現に基づいて評価する
・歴史的な読み、評価から離れて現在の視点から論じる

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