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『天使のたまご』全ての要素が表現を模索している

監督 押井守 1985年 この映画に一般的な意味で言う娯楽性は皆無だ。そして答のない映画でもある。問のように見える要素に満ちてはいるが答はない。この映画の表現が求めているのは意味作用であり、確定した意味ではない。それが成功しているかどうかは観客次第かもしれないが、一般的な娯楽映画にない面白さを備えた映画であるのは間違いない。 ほとんどすべてのカットが物語の説明に堕すことなく何らかの表現を模索している。...

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『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』認識論的魅力に満ちた傑作アニメーション映画

監督 押井 守 1984年 不思議な小路で道に迷うしのぶ。 回り込む背景も含め画面全体が手書きアニメーションで構成され ている。物語への貢献より描写の美しさが優った場面 大衆的な娯楽映画から少しはみ出してみせたアニメ映画。エンターテイメントの枠を内側から押し広げたと言ってもいいかもしれない。いずれにせよエンターテイメントと作家性のバランスがとてもいい。マニアックな作品の多い押井守監督作としては異例なほど...

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『シン・ゴジラ』存在感を取り戻したゴジラと「今」のリアリズム

監督 庵野秀明 2016年 『シン・ゴジラ』はゴジラを作中の人々にとって未知の生物として描き、観客が実際に初めて見る形態で登場させて徐々にゴジラへと変態させる。これによって何度も映画化されすっかり使い古されていたゴジラのキャラクターを刷新し、再び緊迫感を持った物語を可能にしている。 ゴジラへの感情移入や陳腐化し易い人間のドラマを排除しているのもこの映画の強みだ。 そして映画は自信に満ちている。リアリテ...

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『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』瑞々しい感情表現と美しい構成

監督 岩井俊二 1995年 繊細な感情表現、美しい映像、そして郷愁に満ちた物語に抗しがたい魅力がある。とりわけ岩井俊二の映画は感情の流れをうまく掴む一方、物語の骨格が曖昧なことがあるが、この映画には明確な構造の物語がある。そしてその物語が美しい。 ある時点から異なる筋を辿る2つのエピソードから全体が構成されていて、それが多様な魅力を生み出していく。 まず、その接続部分がいい。最初の物語が少女の不幸を目の...

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『ゴジラ(1954)』強烈なキャラクターの確立と丁寧な演出

監督 本多猪四郎 1954年 ゴジラの映画であり、いわゆる怪獣映画だ。観客にとっては見たことはなくとも「ああ、あのゴジラね」と見る前から何となく分った気になるものだが、この映画はとてもよくできていて今見ても面白い。勿論1954年に見るインパクトには及ばないが。 まず作中の人物たちにとってゴジラを未知の存在として描いていくのがいい。観客も作品の展開に合わせて彼らとともにこの作品世界におけるゴジラを徐々に知っ...

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『生きものの記録』フレーム内にひしめき合う演技の合奏

監督 黒澤明 1955年 群像劇が素晴らしい。それを生み出す人物の配置、キャラクター、その描写、中でも主人公である中島のキャラクター造形、三船敏郎の演技は特にいい。不器用な愛情、独善性、旺盛な生命力等々、実によく描かれていて魅力的だ。このキャラクターを見られるだけでも価値のある映画。 実際これは彼の映画と言ってもいいだろう。あらかじめ用意された物語などなくても彼の思考、言動を追っていくことでそれがその...

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『この空の花 長岡花火物語』ある意味で典型的な反戦映画

監督 大林宣彦 2012年  男性教員が「雨が痛いな」という場面が面白い。何のことか分らないが、それがいいのだろう。この映画でほとんど唯一作品の構造に回収されない自由な表現だ。他にも女性記者の年老いた母親が踊っている姿に過去の若いころの姿が重なる場面はとても綺麗なイメージだし、登場人物が唐突にカメラに向かって語りかけたり、テロップが表示されたり、時系列を無視したカットなど、様々な表現上の試みもある。 ...

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『時をかける少女(1983年)』 拙さが際立たせる手作りの美

監督:大林宣彦 出演:原田知世 1983年 全体が破綻していても美しい1カットの魅力が勝る映画もあるかもしれない。『時をかける少女』はそういう映画だ。 この映画を見始めると誰もがすぐに幾つかの欠点に気づくだろう。冒頭から役者の演技がひどく、台詞は棒読み、特殊効果も稚拙で、最初のシーンだけで観客にはこれがいかにひどい映画か分るはずだ。中学生が作ったのだろうかと真剣に疑う場面が頻出する。しかしそれらの場面...

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『3-4x10月』北野武第二の処女作にして一つの到達点

監督 北野武 1990年  北野武が企画・脚本から手がけた初めての作品。観客に対してこれほど挑発的な姿勢の映画もないだろう。監督の北野は前作でその才能の片鱗を見せていたとはいえ、当時1人のコメディアンがこれだけの映画を撮ったという事実は相当な衝撃だったはずだ。 ただ、1990年の人々にとって北野武はやはりビートたけしという単なる一コメディアンに過ぎなかったようで、コメディでもなく類型に則った娯楽作でもないこ...

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ぱこぺら

Author:ぱこぺら
批評なので基本的にネタバレです。できるだけ下記の方針で書きます

・作品外の周辺情報を考慮せず作品内の表現に基づいて評価する
・歴史的な読み、評価から離れて現在の視点から論じる

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