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『父ありき』 編集の飛躍

監督 小津安二郎 1942年 時間表現が優れている。 小津の作品としては前年の『戸田家の兄妹』で父親が倒れた後、一気にその葬式の場面にとぶ編集があったが、『父ありき』ではその手法がすでに自家薬籠中の物となっている。 笠智衆が生徒に修学旅行の話をすると次のカットでもう鎌倉大仏の前での記念撮影になり、芦ノ湖で生徒に事故が起こったらしいという場面からその生徒の葬儀の場面に跳ぶ。省略を含んだ編集が、観客の感性...

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『淑女は何を忘れたか』表層の魅力と普遍性

監督:小津安二郎 出演:桑野通子・栗島すみ子・斎藤達雄・佐野周二 音楽:伊藤宣二 1937年 喜劇風味の軽い作品。夫に不満げな妻と恐妻家の夫の家庭に、妻の姪っ子がやって来て一波乱起こし、結果的に夫妻の仲を好転させて去っていく。 たったこれだけの他愛ない物語の中に、誰しもが経験したことのあるような微妙な心の動きが軽く、しかし繊細に描き出される。小さく可愛いストーリーに軽妙洒脱な描写が合わさって、非常に楽しい映...

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『姿三四郎』黒澤明のデビュー作・動きと悪を描く作家の登場

監督 黒澤明 1943年 この映画は何よりもまず動きがいい。また、全編表現への意欲に満ちている。現実の物理法則をはみ出してしまうのは流石にやり過ぎに見えるが、実に元気のいい新人監督だ。観念的な内容もその単純さも、若さと健全さを感じさせる。悪を描こうとしているのも特徴的だ。表現の面での動き、内容面での悪はそれまでの日本映画の流れからは出て来ない突然変異的な登場だ。 まず、動きという極めて映画的な魅力を日...

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『隣の八重ちゃん』 日常を磨きあげ輝かせた日本映画の傑作

監督:島津保次郎 出演:逢初夢子 1934年 島津保次郎が原作・脚本・監督の3役をこなしている。小市民映画の傑作として同時代から高く評価されていて当時のキネマ旬報ベストテンで2位に入っている。1995年のオールタイムベストでは100位、1999年には選外と順位を下げているが、単に知名度が下がっただけだろう。時代に評価が左右されるような映画ではない。 黒澤明は自選100本に選んでいるし、批評家の佐藤忠男が2012年にこう語っ...

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『コッポラの胡蝶の夢』 構成要素全ての混沌が魅力

監督 フランシス・フォード・コッポラ 2007年 アメリカ・ドイツ・イタリア・フランス・ルーマニア映画 日本語タイトルのセンスが悪いのは残念だが、内容は実に個性的で面白い。この映画の魅力は「格調高い」「深遠な」「重厚な」などといった種類のものではない。節操がない程の多様さと非現実のリアリティとでもいったものだ。様々な異なる顔を持った映画で、見る人によってその印象はまるで違ってくる。SF以前の幻想文学的な...

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『2001年宇宙の旅』 知性と飛躍の映画

監督 スタンリー・キューブリック 1968年 イギリス・アメリカ映画 感情移入できないと辛いという人には悪夢のような映画だ。冒頭から20分間、猿しか出てこない。1匹偉大な個体がいるのでそれに感情移入するのがいいかもしれない。ただ見分けるのがちょっと難しい。 この映画、特にこのシークエンスは登場人物らしい登場人物が存在しないことで、描写のリアリティが映画の最も重要な基礎を成しているということを改めて教えてく...

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『地獄の黙示録』 濃密な現実感、充実した意味作用

監督 フランシス・フォード・コッポラ 1979年 アメリカ映画 偉大な失敗作という言葉がこれほどしっくりくる映画もない。構成に失敗しているのは誰の目にも明らかで、濃密に醸成されてきた意味が肝心のクライマックスで拡散していく。しかしそれでも観客を魅了するという意味ではこの映画は決して失敗ではない。作品の完成度と魅力は正比例しないという見本のような映画だ。 人物、状況、映像、音響、その全てが混沌を示す戦闘...

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ぱこぺら

Author:ぱこぺら
批評なので基本的にネタバレです。できるだけ下記の方針で書きます

・作品外の周辺情報を考慮せず作品内の表現に基づいて評価する
・歴史的な読み、評価から離れて現在の視点から論じる

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