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『天国と地獄』(2) 人間の抽象化と悪の普遍性

監督:黒澤明 出演: 三船敏郎・山崎努・仲代達矢 1963年 描かれる内容が非常に興味深い。内容面では『天国と地獄』は傑出した二人の人物とその相克を描いた映画と言えるだろう。三船敏郎演じる権藤と山崎努演じる竹内の二人だ。後半部の展開では戸倉警部の意志が竹内の運命に対して決定的な影響を与えている一方で主人公の権藤はほとんど出番がなく点景人物のようにも見えるが、この映画がその心理を真に深く入念に描いていると言...

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『天国と地獄』(1) 多様で充実した表現

監督:黒澤明 出演: 三船敏郎・山崎努・仲代達矢 1963年 非常に重量感のある映画だ。 人間心理の深奥にある暗く重い情念を描いた内容、必要な情報を大量に入れ込みながらもスリリングに展開する脚本、静的な室内シーンと動的な列車シーンなど、場面によって異なる多彩な演出とその鮮やかな対照、背景音楽を抑制し現実音を利用する音の演出等々。これほど贅沢な映画はちょっと他にないかもしれない。 もし映画というものを知らな...

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『M』 悪とその処遇が炙り出す人と社会の矛盾

監督 フリッツ・ラング 1931年 ドイツ映画 この映画が描くのはあくまで一人の特異な人物と彼に対する様々な人間の反応であり、公私二つの性質の異なる集団がいかにして犯人に辿り着くかの過程だ。サスペンスやスリラーといった犯罪映画定番の要素を半ば素通りして物事の現実的なプロセスと人間そのものに執着する描写が重厚な印象を与える。 被害者の母親の詳細な描写、市民の素朴で些か無責任な反応、マスメディアの報道、警...

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『飾窓の女』 フリッツ・ラングの描く虚構としての世界

監督 フリッツ・ラング 1944年 アメリカ映画 夢の描き方が実にうまい。俗に言う夢オチ映画だが、その種の映画の多くがラストになって唐突にそれまでの展開を無効にして観客を白けさせるのに対して『飾窓の女』はまったく異なる。真逆だ。 『飾窓の女』ではそれまで現実として扱われていた描写と展開が、ラストに至って虚構としてこそより相応しいものであったことを観客が驚きとともに発見する。通常の夢オチ映画と違って夢と...

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『トゥルーマン・ショー』 世界は舞台、人は役者

監督 ピーター・ウィアー 1998年 アメリカ映画 閉じた虚構の世界に生きる男が自由と他者を求めて現実の世界を目指す姿を描いた映画だ。その物語自体とても面白い。ピーター・ウィアーの持ち味である叙情性や湿度の高い映像の美しさもそれをより高めている。そこにさらに他者の人生を娯楽の手段とする人々などブラックユーモアとしての側面、虚構の世界やその現実との関係を描いたメタ・フィクション的な性質もある。それぞれの...

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『キャビン』 B級映画のパロディ

監督 ドリュー・ゴダード 2012年 B級ホラーの体裁をとったコメディ映画。そして映画についての映画でもある。その着想が面白い。観客の視点をパロディ化し作品に内在化しているのが、この映画の眼目だ。それが観客という立場を客観的に考えさせてくれたりもする。それでいてちゃんと楽しめる映画になっていて、その点では作り手の確かな手腕を感じさせる映画でもある。 孤立した若者たちが次々と襲われていくB級ホラーの定番通...

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ぱこぺら

Author:ぱこぺら
批評なので基本的にネタバレです。できるだけ下記の方針で書きます

・作品外の周辺情報を考慮せず作品内の表現に基づいて評価する
・歴史的な読み、評価から離れて現在の視点から論じる

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