タイトル前の燃え上がるマッチの極端なアップとその発火音、奥から効果音付きでやってくる「WILD AT HEART」の文字列、やがて聞こえてくる優雅な背景音楽と本編に入った途端の「イン・ザ・ムード」。映像と音、そしてそれらの持つリズム感、全てが自己主張し、かつ融合して一つの表現となっている。紛うことなきデヴィッド・リンチ作品だ。 本編においてもフラッシュバックする炎の接写、場面転換に同期する効果音と音楽、ラジオから流れ、登場人物に歌われる50年代の音楽など、いつもながら映像と音に優れ、カットとシーンを音楽のように構成する編集によって、見事な音響映画に仕上がっている。映画は普通見るものだが、リンチの映画は聞くものでもあるのだ。