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『エリミネーターズ』 B級映画のB級映画らしい面白さ

1986年 アメリカ映画

 低予算で作られているSF映画で、びっくりするほど出来が悪い。しかし、つまらないかというとそうとも限らない。あからさまに不適切な処理が逆に面白く、ツボに嵌れば爆笑できる。

エリミネーターズ いきなり描かれる飛行機事故となぜかローマ時代の兵士と爆発。その唐突で荒唐無稽な展開、半端な描写、安っぽい特撮と派手な音楽。見紛うことないB級映画だ。普通なら脚本、撮影、造形等々いずれかの部門が格好をつけて少しは見栄えを良くしようとするものだが、この映画はオープニングからそんな気配を微塵も感じさせない。舞台裏を真正面から曝け出して気持ちいいほどの出来の悪さだ。

 主人公は悪い科学者に改造されたサイボーグという設定で、顔は半分機械剥き出し、左手が脱着可能な武器になっている……、ということなのだが、安っぽくて素人のコスプレにしか見えない。なのに役者がその格好でシリアルに二枚目を演じようとするので可笑しくて仕方ない。さらに彼は「起動ユニット」をつけて増々不格好で扱いづらい存在になってしまうのだ。そうなる必然性もメリットも見当たらないのがすごい。しかしこれが主人公とうまく一体化しているし、ちゃんと動く。不要なものに限って結構よく出来ていて困ってしまう。捨てるのは勿体なさそうだし処理には困るしで、観客を何とも言えない複雑な気持ちにするのに実に効果的だ。敵との決戦において溝に嵌って早々と使い物にならなくなるのは、きっと演出的にも扱いに困ったのだろう。その時の無念そうな主人公の表情も味わい深い。

 映画には多彩な要素が登場する。サイボーグ、タイムマシン、ネアンデルタール人、忍者、美人科学者など。敵のリーブス博士は原子を裏返しにする兵器も持っている。とりあえず観客を呼べそうなものは全部出してしまえといったところだ。うっかり「面白そうじゃないか」と思ってこの映画を見てしまった人もいるに違いない。原子裏返し兵器など出されると確かに観客としてはワクワクしてしまう。原子を裏返すとは具体的にどういう状態を言うのか? きっと凄い威力があるに違いないぞ? 主人公はどうやってそのピンチを切り抜けるのだろう? しかし使用前にあっさりと破壊される。見事に予想を覆す展開に観客も呆然だ。

 主人公のジョンも仲間とともにボートで敵の基地を目指している途中、ボートが少しスピードを上げると「あー」と言いながら川に転げ落ちるし、更に仲間が早々に彼をあきらめてしまう適当な展開が追い打ちをかけ爆笑させてくれる。彼はリーブスと戦ってもコテンパンにやられてしまうし、最後に主人公らしく自己犠牲の精神を発揮して仲間たちを救っても誰にも気にしてもらえない。なぜ主人公をこれほどカッコ悪く描くのか制作者の意図が全く読めない。斬新だ。

エリミネーターズ 彼の仲間たちも皆少しおかしくて、美人科学者のハンター大佐は絵に描いたような軽挙妄動で、少し頭の弱い女性になってしまうし、船乗りのフォンタナも善良さのはずが、間抜けなキャラ付けを帯び、忍者はなぜか川で魚釣りをしている。シリアスなはずのシーンがことごとくギャグに転じていき、あらゆる面で観客の思考のはるか下を行く描写と展開がその度に笑いを誘う。ラストでは彼らの活躍とデタラメな展開でリーブスをやっつけて見事ハッピーエンドだ。誰か足りないような気もするが別にどってことはないだろう。彼らの無邪気な喜びようがちゃんと観客をハッピーな気分にさせてくれる。

 その数々の斬新な展開はとても面白いのだが、本当にこれでいいのだろうか? とにかく脚本の目的とそのための手段がことごとく乖離していて狙いとは別の効果を発揮していくのはすごい。狙ってもできないだろう。脚本を読めばとんでもない映画になることは一目瞭然だったはずなのにそのまま撮影してしまう大胆な制作姿勢も清々しい。突出した出来の悪さが笑いを生み出す楽しいB級映画だ。

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