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『ターミネーター』 健全な野心

監督 ジェームズ・キャメロン 1984年 アメリカ映画

ターミネーター アーノルド・シュワルツェネッガー演じる殺人マシンが大暴れする楽しいアクション映画。ただ、意外にも基本プロットは「平凡な女の子が危機的な状況に直面することで成長する話」といった感じで、どちらかというと女性向きの内容になっている。
 その骨格だけ取り出してしまうと『千と千尋の神隠し』と見分けがつかない。どちらの作品も物語の展開の中で彼女たちは助けられる立場から助ける立場に成長していく。また、日常生活においては鈍重だが、本来的に強さや賢さを備えているという人物設計もよく似ている。キャラクターやプロットに魅力を見出す人なら、きっとどちらの映画も気に入るだろう。

 『ターミネーター』ではその女性向きのプロットをSFやアクションといった男性向きの意匠で包んでいる。男女問わず万人が楽しめる映画となった所以だろう。

 シナリオは非現実的、類型的なストーリーながらも心理的なリアリティはきちんと演出され、構成もサラ・コナーの物語を軸にキャラクターやアクション、ロマンスなどがその魅力を発揮するようにバランスよく組み込まれている。

 描写は全般にB級映画らしからぬ注意が払われていて、何気ない序盤のサラの描写を見ても、安っぽい飲食店の喧騒、彼女の平凡さとドン臭さ、なぜかポケットにアイスクリームを突っ込んでくる男の子など、実に雰囲気タップリで、その中に彼女のキャラクターが的確に表現される。
 ロマンチックな場面ではソフトフォーカスを使用したり、サラとカイルの感情の動きをおさえた丁寧な演出で、恋愛映画としても楽しめる作りになっているし、そしてもちろんSFアクションとしてターミネーターの人間離れした暴れっぷりや不死身振りが痛快だ。悪役としての魅力は突出しているし、安っぽい美術やコマ撮りのぎこちない動きにもB級映画ならではの味わいがある。描写には少し苦しいところもあるが、何とか破綻せずに成立している。

 非現実的な設定や類型性に捉われず、この映画の意図するアクションやロマンス、武骨なデザインや味わいのある特撮などを楽しめるならとても面白い映画だ.。

ターミネーター この映画はとにかく制作姿勢がいい。作品を面白くしている原動力だろう。作り手は不充分な環境に腐ってもいないし、B級映画に甘んじようとも全く思っていない。
 題材に対して明白に不足している予算には、ミニチュアやコマ撮りを駆使したカメラワークの工夫で乗り切り、楽しみどころが分かり易い反面、陳腐とも言えるストーリーだが、細部に意を配った丁寧な演出で緊迫感を保つ。通俗SF雑誌から抜け出してきたかのようなデザインは逆に作り手の好みでもあるようで、チープさを気にせず丁寧に演出される。
 様々なB級映画的な要素を補う創意と工夫が実に意欲的で、決して恵まれてはいなかっただろう状況の中で現実と戦おうとする健全な精神が素晴らしい。

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