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『Virginia/ヴァージニア』 コッポラの極私的映画

監督 フランシス・フォード・コッポラ 2011年 アメリカ映画

Virginia/ヴァージニア かなり出来の悪い映画と言ってしまっていいだろう。映画が始まるとすぐにナレーションが舞台となる町の様子を説明してくれるのだが、「明らかに悪霊が住みついているのだ」と断定的に語る主観丸出しのナレーションはどこの誰かも分からないし、これ以降出て来ることもない。設定は現代のようだが、描かれる町や住人は ’60 〜 ’70年代ごろのアメリカ映画のようだ。そのような町が現代に存在する特段の理由も描かれない。登場人物は大げさな保安官、田舎の本屋を巡る三流作家、ミステリアスな湖畔の暴走族、少女の幽霊など、あらゆる意味でリアリティを欠いている。脚本や演出も同様で、三流作家の夢の中で展開してしまうストーリーは観客を白けさせること請け合いだ。幽霊の少女は何となく出てきて何となく会話も成立する自然さで、怖くはないし不思議さもない。なるほど夢ならそんなこともあるだろう。しかし映画としては当然のごとくただただ空疎なだけ…。夢を描く手法としては『アイズ ワイド シャット』でのキューブリックの方法論がいかに素晴らしかったかこんなところで再確認できてしまう…。

 困ったことに描写はそれなりに凝っていて、それがB級映画らしい楽しさまで阻害してしまう。楽しみ方を見つけるのが非常に困難な映画だ。おそらく映画そのものを劇中の三流作家の作った世界と解釈して、そのいかにもな三流ぶりを味わうのがもっとも面白い鑑賞方法なのかもしれない。

 しかし、コッポラ自身がこの映画の出来を正しく評価できないとは考えにくい。『地獄の黙示録』など映画史に残る名作を撮った監督だ。どう考えているのかは分からないが、おそらくこの作品は自己資金での低予算映画でもあるし、他人に見せることなど考慮せずに自分の趣味に忠実に、好きに作ってみたのだろう。作り手にとってはとても楽しい作品であったのかもしれない。もちろん、感性の合う観客にとっても面白い映画だろう。エドガー・アラン・ポーの読者であればなお好ましい。そんな条件に合う人はかなり希少だろうが…。それとももしかしたら、現代の観客である我々には早すぎたのかもしれない。百年後の観客がこの映画を楽しまないとも限らない。

 『胡蝶の夢』も似たような趣向だったが、作品内における品質のバラつき、ジャンル映画の混淆のような内容が、軽薄さと紙一重で奇跡的な均衡を保って実に魅力的な映画となっていた。しかし、それはやはり一度限りの奇跡だったのだろう。同じ作者によっても再現は不可能だったようだ。

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