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『ジキル博士とハイド氏 (1932)』優れた人物設定と多様な描写

監督:ルーベン・マムーリアン 脚本:パーシー・ヒース/サミュエル・ホッフェンシュタイン 出演:フレデリック・マーチ 1932年 アメリカ映画 公開時、もっとも注目され評価されたのは同一人物によるジキルとハイドの演技、特撮を使った変身描写などだったようだが、今日ではそれらが最も古びた要素になってしまっている。真正面からアップで捉えた懸命な顔の演技は少しコミカルに見え、特撮は陳腐で特に印象的なものではなくなっ...

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『狂へる悪魔』描写には魅力もあるが…

監督:ジョン・S・ロバートソン 出演:ジョン・バリモア 原作:ロバート・ルイス・スティーヴンソン 1920年 アメリカ映画 スティーブンソンの『ジキル博士とハイド氏』の映画化作品。原作小説は1886年の出版で、発表当初から評判がよく、翌年にはアメリカで舞台化されている。映画は1908年以来、今日まで数え切れないほど作られ続けていて、ある英文学者によるとざっと70本はあるそうだ。その中で比較的評価の高いのがフレデリッ...

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『ワイルド・アット・ハート』映画を笑うための映画

監督/脚本 デヴィッド・リンチ 1990年 アメリカ映画 タフな男のワイルドな生き様を描いた痛快アクション・バイオレンス巨編であり、感動の純愛ラブストーリーだ。が、そのあまりにストレート過ぎる表現はその種の映画のバカバカしさを観客に否応なく自覚させて爆笑を引き起こしてしまう。つまり、これはコメディ映画なのだ。B級映画のでたらめな表現を大真面目に模倣し、おしゃれなフィルムノワール(フランス語でこう呼ぶと作...

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『マルホランド・ドライブ』解釈と意味作用

監督 デヴィッド・リンチ 2001年 アメリカ映画 この映画は様々な謎が提示されミステリーのように展開していくが、謎そのものは決して解き明かされない。つまり推理モノのように最後にすべてのピースが当てはまり全体の絵が完成されることでスッキリしたいという人には向いていない。しかし、それとは別の、もっと幻惑的な面白さを与えてくれる。 もしかしたらデヴィッド・リンチはミステリー作品に物足りなさを感じたことがあ...

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『残菊物語』卓越した描写と偶有性

監督 溝口健二 1939年  二人の馴れ初めは右向きの移動撮影、追い出された  お徳は左向きのパンで去っていく。 シーン内での時間・空間の連続性の維持が徹底されていて、その完成度が異常に高い。『浪華悲歌』の頃、要所要所で使われて効果を発揮していた ”場” の演出がほぼ全編に拡大され、緊張感を漲らせている。その張り詰めた空気は観客にも伝わってくるほどで、撮影時の演者とスタッフの緊張はとんでもないものだったろ...

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『嫁ぐ日まで』技巧が支える親しみ易さ

監督/脚本:島津保次郎 出演:原節子・矢口陽子・杉村春子 1940年 平凡な日常を新鮮で魅力的なものに刷新してしまう島津の資質が十二分に発揮された一本。内容、表現ともに新しい試みが見られないのは少し寂しいが、そのかわりに、ホームグラウンドで羽を伸ばした、寛いだ楽しさがある。 内容的には当時の結婚や家族関係が主に描かれる。登場人物は皆、自分の感情や将来設計より家の存続とその中で果たすべき役割を優先して考え...

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『愛より愛へ』他愛なさを称賛させずにおかない

監督 島津保次郎 脚本 大庭秀雄 出演 高杉早苗 1938年 古い映画だが現代においても誰もが気軽に楽しめる良質の娯楽映画だ。 物語は戦前の家制度を背景に階級の違う若い男女のカップルを描く。定石通りに破局や自殺を仄めかす描写を挿入しつつ展開し、観客にドラマティックな悲劇を予感させる。ところが、最後になってそれまでの深刻な展開を台無しにして唐突なハッピーエンドに収束してしまう。もちろん観客は拍子抜けだ。し...

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『朗らかに歩め』小津の別系譜

監督 小津安二郎 1930年 冒頭、接岸した大きな船を捉えたカメラがトラックバックしてゆき、手前に並んでいる自動車を次々に入れ込んでいく。なぜか自動車が斜めに並んで停まっているのは、勿論、この美しい構図を作るためだろう。その前を今カメラが通ってきたのと逆方向に群衆が全速力で奥に走っていく。そこから次々とカットを変え、場所を変えて、カメラは走る群衆を捉えていく。カメラと被写体の動き、構図、カット割り、全...

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『ある犯罪の物語』特殊な表現とドラマの獲得

監督 フェルディナン・ゼッカ 1901年 フランス映画 5分14秒 ある男が強盗殺人をして、警察に捕まり、絞首刑に処せられる。その中に彼の回想シーンが出てくるのだが、その表現方法が現代の映画とは異なっていて、とても面白い。  現在と過去が同時に存在し、  部屋の配置がなぜか反転する不思議な描写 まず、彼と看守らしい人物が独房で寝ている様子が描かれ、その同一フレームの中にもう一つの小さなフレームが突然現れ、...

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『月世界旅行』虚構の魅力

ジョルジュ・メリエス 1902年 フランス映画 14分 史上初のSF映画として有名な作品。人の顔をした月に弾丸が突き刺さっている画は、誰もが一度は目にしたことがあるだろう。映画という極めて現実的な表現媒体で、自由奔放な夢物語を具象化したことが画期的だ。 キネトスコープの頃から映画に内在していた魅力のうち、リュミエール兄弟が映画の迫真性と記録性の魅力を知らしめたのだとしたら、ジョルジュ・メリエスは映画のもう...

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『火事だ!』虚構のリアリズム (英題: Fire!)

監督 ジェームズ・ウィリアムソン 1901年 イギリス映画 4分40秒 ある建物に火事が起こり、それを見つけた警官が消防署に知らせ、住人の危機と消防隊の活躍があり、最後に住人が無事救出される。 非常に単純だが、複数の異なるシーンを連結することによって起承転結、つまり物語を獲得している。映画が物語を語り始めた時代のオリジナル・ストーリーだ。 ただ、その最初期の物語はあまりに単調すぎて、現代においては退屈な映...

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『逆噴射家族』真正の喜劇

監督/脚本: 石井聰互 原案/脚本: 小林よしのり 脚本: 神波史男 1984年 非常識で不謹慎極まりない映画。表題は死傷者を出した痛ましい航空機事故のパロディになっていて、夫と妻、親と子が殺し合い、祖父は孫娘を強姦しようとする……無茶苦茶な映画だ。しかし、だからこそ道徳の範囲内に収束してしまう通常のコメディ映画とは比較にならない面白さがある。 既存の良識と価値観に揺さぶりをかけるのが、喜劇の効用の一つだとすれ...

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ぱこぺら

Author:ぱこぺら
批評なので基本的にネタバレです。できるだけ下記の方針で書きます

・作品外の周辺情報を考慮せず作品内の表現に基づいて評価する
・歴史的な読み、評価から離れて現在の視点から論じる

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